MSの装甲について思うこと
お久しぶりです、さいえんすふぃくしょん。です。
生活の上で求められる役割が激変して、在宅ながら一気に忙しくなってぜんっぜんブログを更新できない日々が続いております(;´∀`)
そろそろ落ち着きそうなので、ちょっとずつブログに思うことを書いていこうかな、と思う所存です。お付き合いいただける方は、今後ともよろしくお願いいたします。(何度目のあいさつだろうこれ)
今回のお題は、東京おもちゃショー2019で発表になったこのお値段10万円のνガンダムを見て思ったことなどをリハビリがてら綴っていきます。
- 解体匠機νガンダムについての初見の感想
- 最近のトレンド「情報量」
- でもそもそもMSって
- ロボットの役割から考える分割線
- 再び、今回の新商品を見てみたい
- 工業製品的なつるつるてんなνガンダム、欲しい?
- 言いたいことのまとめ(+ちょっと一言)
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解体匠機νガンダムについての初見の感想
新たな高価格帯ハイエイジトイブランドのフラッグシップモデルというだけあって、とても情報量が高く格好いいな、というのがはじめて宣材画像を見た時の印象でした。
メタルビルドの品質をそのまま1/60相当に落とし込み、なおかつギミック面も向上させた商品といったところでしょうか。
ガノタ的にみると関節各部に若干玉虫色の塗装が見て取れて、「あ。しれっとUCのサイコフレームマシマシを公式解釈っぽくしてんじゃないかコレ」と複雑な感情を抱えてしまうところではあるものの、クオリティについては圧倒的であるといえるでしょう。
なんたってお値段が10万円という石油王御用達モデルなので、クオリティに隙はないぜ!ということなのでしょう。トイというよりはおしゃれな部屋のインテリア*1なのだといった異様な存在感を感じますね。
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最近のトレンド「情報量」
この解体匠機νガンダムを見ていて、一目でわかるのは、その圧倒的なまでの「情報量」です。最近のガンプラ業界・ロボットデザイン業界のトレンドですね。
基本の線に加えて、装甲の分割線を複雑に書き加えていく。時折凸ディテールや凹ディテールでアクセントを加えて……と最近のバンダイ商品はハイエイジトイに限らずこの傾向でハイディティール化されています。ガンプラでいうと、旧キット時代からディティールアップされHGシリーズやMGシリーズへと移行し、近年ではHGのディティールでは物足りないといわんばかりにさらなる分割・ハイディティール化の進んだRGなどが登場するなど「情報量の追求」は当然の流れとなっている感があります。
それは、1979年ころのロボットアニメの味としてガンダムが持っていた「時として柔軟に体が伸びる」ようなおおらかな作画が、Zガンダムで突然「解像度が引きあがった」かのような、ある種必然の流れなのだと思います。
そして、事実、ハイディティール化されたモビルスーツ*2たちは、ある種のリアリティをもって「アニメのキャラクター」から「実在する何か」へと変容を遂げたかのようです。
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でもそもそもMSって
なぜ先ほどの文章で「実在する兵器」と言わずに「実在する何か」と表現したのか。それは端的に言ってしまえば、「兵器ってこんなに分割線だらけじゃないんじゃないの?」という疑問にぶち当たったからです。
やいやい、フィクションに野暮なこと言うんじゃねぇや!ってお思いの方。大正解です。
確かに野暮だよなぁこの話。なんというか、ロボットアニメが大好きなのにロボットアニメの二次元のウソに耐え切れなくなった事案などを彷彿とさせる非常に野暮な話なんです。
でも。ちょっと気になったので、いろいろ考えてみます。以下の文章は主に宇宙世紀を念頭に私の中の妄想全開でお送りいたします。
本来モビルスーツとは、宇宙空間、それもミノフスキー粒子下でレーダーが効かない状態での有視界戦闘用のロボットです。人型をしているのは、大枠では「汎用性」を持たせるためと語られることが多いですかね。
戦闘用のロボットということは、MSは軍事上、人型戦闘機*3に当たるものであり、兵器である以上、堅牢なつくりを要求されます。
一般的に、可動部位が多くなればなるほど構造が複雑化し、機器としての強度は下がります。工業製品がシンプルな面取りとなっているのは、製品強度とのバランスのうえデザインされているからでしょう。
そして実在する兵器群を見てみると、兵器としての強度を維持するために、極力面一を追求する傾向にあります。
一例として、日本の自衛隊の装備を見てみたいと思います。
こちらは、航空自衛隊のF-35A戦闘機です(航空自衛隊HPより引用しました)。
戦闘機は、空力上の制約が大きく出るため、各可動部位が徹底して面一になるように設計されているのが見て取れます。
次に、陸上自衛隊10式戦車です( 陸上自衛隊HPのFlickrから引用しました)。
こちらは、戦車ということもあり、装甲の役割が最もモビルスーツに近い特性をもつものと思われます。写真を見ると、各部びょうのようなディティールが見て取れますが、こちらも基本的に装甲に分割線のような部分はあまり見られません。装甲をつなぎ合わせる部位もおそらく溶接されているものと思われます。可動部位を保護するように装甲が配置されているのがわかりますね。
最後に、海上自衛隊から護衛艦むらさめです(こちらも海上自衛隊ホームページから引用しました)。
艦船も、戦車や戦闘機同様、基本的には面一になっているようです。ただし、電探部や艦橋部など装備が複雑に集中する箇所は面一とまでは言えないかな。
このように、基本的に兵器にはあまり分割線が入っていません。強度を確保するためにはどちらかというと面を*4そろえる傾向にあります。
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ロボットの役割から考える分割線
次に、ロボットの構造から考えた時の分割線についてです。
モビルスーツは人型をしているので、人体と同様またはそれ以上の可動域を確保する必要があります(少なくともそれくらい動かないと、戦闘機のほうが汎用性高いね、ってなりそうです)。そこで、ガンプラよろしく可動部位には可動域を確保するための線が入ることとなります。これがロボットの構造上必要な線ディティールだとすると、だいたいHGくらいの可動部のあたりに線が入っていればよいこととなります。
もちろんそれでは解像度が低い、となれば今度は装甲の継ぎ目・溶接部の線を足していくことになるでしょうか。先ほど見た10式戦車のように装甲と装甲の間の段などを考えてディティールを入れていくことになりそうです。また、びょうのようなディティールも説得力が増すでしょうか。
しかし、あまりにもラインを入れすぎてしまうと、ロボットの持つ「工業製品感」が失われることとなりそうです。
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再び、今回の新商品を見てみたい
このあたりのことを念頭に置いて今回の商品を見てみましょう。
うーん格好いい……じゃなくて。
この動画の中でナレーション*5が「モビルスーツを実在のプロダクトととらえてリアリティを徹底追及」とうたっています。そこに少し引っ掛かりを覚えたのが今回の記事を書こうと思ったきっかけなんです。
つまり何が言いたいかというと、このνガンダムのディティール、明らかにオーバースケールじゃない……?
今回、うたい文句として「実在するプロダクト」と言っているので「実在するプロダクト≒実在する兵器群・工業製品群」と考えると、先ほど見たようにディテールは抑えめになるほうが「リアリティ」はあるはずなのです(そしておそらく、そのことについてはバンダイとしても百も承知なんだとは思います)。
ですが、実際の商品は、ハイディティール化処理された今のトレンドにあった最高峰のνガンダム。実物は見ていませんが、写真を見ただけでなぜか「リアリティ」を感じてしまうほどの説得力があります。
これは、おそらく「二次元のウソ」や「演出・外連味」と「実在兵器群」とのバランスを考えた結果なのでしょう。そこがバンダイのうまいところだよなぁと思うのです。
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工業製品的なつるつるてんなνガンダム、欲しい?
ちょっとほしいかも……。じゃない。
ロボットアニメを長く親しんでいる人からすれば、リアルにこだわりましたという触れ込みでASIMOみたいなつるつるてんなνガンダムを出されたとしても絶対に「コレジャナイ感」に苛まれることになります(断言)。
ファンには、劇中でサザビーと死闘を繰り広げ、その後幾多のデザインアレンジや、スパロボなどへの客演を経て醸成された「νガンダムらしさ」のイメージがあります。
そのイメージを損なわないで、なおかつ、実際に兵器として運用されているνガンダムが見てみたい、欲しい……。そんな欲求を具現化したのがこの商品なのでしょう。
そのあたりがバンダイは、非常に上手です。キャラクタービジネス界で爆走しているだけはあります。伊達じゃない!のです。
ファンの持つイメージを壊すことなくという点では、フルハッチオープンやサイコフレーム(こちらは賛否両論でしょうが……)という設定面や、ロボとしての格好良さ外連味をしっかりとおさえることによってクリア。
そして、リアリティ面は、整備運用を考慮した位置に装甲の開放部位を設けるという物語を持たせることによって、オーバースケールによるリアリティの低下をうまく目立たなくし、格好良さとリアリティの両立を図る。
その結果、商品を目の前にするとリアリティに圧倒される。「リアルじゃないのにすごくリアリティを感じることができる」という一種のなぞかけめいた状態を作り出したのが、今回の商品のすごい点だなぁと個人的に思います。
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言いたいことのまとめ(+ちょっと一言)
今回は、超絶ざっくり言ってしまうと「モビルスーツにおけるハイディティール化ってリアルじゃないのにリアリティあるよね。」であり、「それを見事に立体物に落とし込んだバンダイってやっぱ凄いんだな」です。
ですが、個人的には最近のハイディティール化インフレについては、少し思うところがあります。
確かに格好いいんです。アプローチとしては大好きなんです。実際模型雑誌で見かけるハイディティール化作例などは迫力があります。
ですが、ちょっとインフレが過ぎるのではないか、とも思うんです。
それこそ、HG+ディティール追加少々。くらいがちょうどいい塩梅なのかもしれない、巷がハイディティールマシマシ外連味カラメっていいよね・面白いよねというブームなのは何となく肌で感じるところがありますが、個人的には落としどころを探したいところです。
モデラー的な目線*6から新商品を眺めてみたら面倒くさいことになったよ、という記事でした。
※もちろん、素人が主観であーだこーだ言っているだけですので、ハイディティール化マシマシは悪だ!などと言うつもりは全くありませんのでご安心くださいませ。
*1:ガンプラおじさん的には冗談と本気交じりで語ってきたインテリアという言い訳が、ぶっ飛んだ公式(誉め言葉)によって斜め上で実現してしまったかのような、そんな暴力的なクオリティを感じます。
*2:情報量の多いガンダム、一目見ただけで格好いいなと正直に思います。
*3:それぞれ期待ごとに攻撃機・戦闘機等の分類は大いにありえて妄想が止まらないところなのですが割愛。
*4:実際に「いずも」を乗船見学する機会があったのですが、甲板の上はほぼ面一でした。艦船としての気密維持にも、ステルス的な機密保持にも意味があるのだと思います。※あくまで素人の妄想です。
*5:古谷さんはホントなんでこんな色気ある声出すんですか!好き!